前回は、Aさん(委託者)がAさんの息子さん(受託者)にAさんの不動産を信託する仕組みを説明いたしました。
では、なぜ信託をした方が良いのでしょうか。
「財産を守る」という視点から考えてみましょう。
Aさんが健在のときには何も問題が起きません。
しかし加齢によりAさんの判断能力が低下した場合、Aさんは不動産を管理・運用することができるでしょうか。
不動産管理に関してはその業者にお願いをする、という選択肢があります。
家賃の回収や入居者の募集などをお任せすることはできます。
問題はやはり運用、でしょうか。
これには不動産を所有しているAさんの判断を必要とします。
歳をとるのは人だけではありません。
不動産も時間の経過とともに老朽化していきます。
その場面に直面したときに、大規模な修繕をするのか、建て替えるのか・・
その資金は自己資金から出すのか、銀行から借りなければならないのか・・
それとも収益性の悪い物件だったら売却を考えた方が賢い手なのか・・
判断能力が低下したAさんに、このような大きな金額が動く決断ができるでしょうか。
また、相続対策を考える際にも上記のような検討、判断をすることがあります。
収益性の悪い物件であれば売却をして資金化して生前に贈与することも、
資金が多くあるのであれば建て替えをして資金を不動産にかえることも、
修繕、建て替えのために借入をすることも、
相続対策です。
つまりは、不動産を運用すること、相続対策を考えることを広く「財産を守る」こととするなら、
その当事者である所有者Aさんが判断できなくなってしまうことが大きなリスクになってしまうのです。
さらに、Aさんの「判断能力がほとんどない」状態になってしまうと、Aさんは契約を結ぶことが難しくなります。
そのため、判断をAさんの息子さんが代わりにしたとしても、契約者となるのは所有者のAさんであるため、Aさんが契約を結べない以上、実行に移すことはできません。
修繕も建て替えも借入も売却も契約をしないことには始まらないからです。
では、このリスクを回避する方法はないのでしょうか・・・
それが民事信託です!!
続きます。